国内出荷額と輸出入額の比較
最近、英国、米国の印刷団体あるいは印刷関連雑誌で中国への国内印刷需要流出に関するデータや話題を多く見かけるようになってきた。グローバル化の時代だから当然だが、いささか過剰反応気味のように思う。それは日本でも同じである。
図は、大分類での印刷物輸入と国内生産額との関係を示したものである。図で見るとおり、2004年の輸入印刷物額は1263億円、前年比5.4%増だが、国内生産額全体に占める割合は0.9%に過ぎない。中小印刷業界に関連が深い分野は表の最下段だが、その分野での輸入比率は0.5%である。同様の意味での米国の印刷物輸入比率は2.8%で、陸続きのカナダからの輸入を除くと輸入比率は1.9%となる。いずれにしてもかなり小さい。
労働コストの安い地域での生産・逆輸入は、どの産業でも起こりえることだが全てを一律に考えることは危険である。印刷物では、得意先の生産工場の海外移転にともなう資材物印刷物の流出は当然である。大ロットの再版主体の印刷物も、生産コストに対する物流や材料の調達費用のバランスおよび材料を含む品質で問題がなければ海外生産も当然だろう。品質に関して、材料調達は意外に大きな障害になる。物流を伴う場合には当然納期の問題が大きい。物流と品質保証の観点からは、デジタルデータの海外での処理の可能性は広い。
以上、いろいろな観点から考えるべきことがあるが、普段から印刷業界内部で言われていることと、中国等への印刷物需要流出の危機感には矛盾を感じる点が多い。次の日の予定も立たないほど納期が短い、変更が多くて下版は納期ぎりぎりになってしまう、通信回線を使った色校正は顧客が納得しない、何故それが問題だと言われるのか理解できないような品質欠陥の指摘がある、紙の種類が非常に多い等々である。これらはいずれも海外生産においては大きな障害になるはずだが、中国の話になるとそのようなことは一切ないことを前提としたような懸念が先に立つ。印刷物の国内需要の海外流出については、冷静に、長期的視点を失わずに考えたいものである。(『FACT』2006年4月号より)
(注1)新聞業の出荷額は「新聞の総売上高」((社)日本新聞協会)、出版業の売上は「書籍・雑誌販売金額」(出版研究所)の合計
(注2)新聞・出版業以外の2004年の国内産業出荷額は、概要版の4名以上の出荷額前年比を2003年の全事業所出荷額に掛けて算出した数字。
なお,図が見づらい場合は画面を印刷してみてください。